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こんにちは。ディズニー講演家の香取貴信です。
僕がディズニーランドでアルバイトをしながら本当にねお客様の気持ちを考えたことがなかったんですよ。客は待ち時間だと思ってたし相手の気持ちって考えたことがなくてね、その中で僕が本当に相手の気持ちを考えるきっかけになった出来事。もう本当にそんな人いるんだなっていう出来事のお話をさせてもらおうと思います。
ちょうどねそれがね18歳の時で、あの16から働いてたんで、もうね現場ではもうお山の大将です。一応ね口では言ってました後輩たちに。「おいお前らいいか!お客様の気持ちを考えてやるのが大事なんだぞ!ハートだぞ!」とか言ってたんですけど考えたことはないです。かっこいいかなと思ってやってたわけですよね。
そんな時に長い時間働いてくれてありがとうっていうことで、チケットもらったんです。従業員用のパスポート。そしたら俺の友達が来て、「お前チケットもらった?」「おい、もらったよ、これすげーぞ!」とか言って、「何が?!」って聞いたら「これどんなに混んでても、このチケットは特別だから入れるぜ!!!」って言われて、「おーじゃあこれは混んでる時に使わないともったいね~~!」とか言って、あほだから。
お盆のね金曜日に遊びに行きました。一番ディズニーランドが混む時期ね。そんであそこね、6万5,000人からそれ以上入っちゃ駄目っていうのがあってそれ狙っていって当然入場制限してるんですよ。「ほんで、やったぜ~!」って言って行ったら、入れっかな~?と思ってチケットを見せたら…入れちゃうんだよね。
で、やったーって言って中入ってって、中すげー混んでんだけど、そこは働いてるから知恵ついてるので、このアトラクション何時になったら空くとか、このアトラクション何時になったら空くも分かってるし、よっしゃ、パレードも見ようぜ!ってパレード見るんだけど一番前に座るわけよ。でも何がしたいかって言うと一番前に座ったら知ってる人に見つけてもらいやすいわけよね。優越感に浸れるじゃん。
一番前に座って、本当はいけないんだけど知ってる奴が通るたびに声をかけると。(おい!おい!!)って。俺たちだけは特別だっていうのみんなにアピールするわけね。
翌日、ここで事件が起きて、その日お盆の土曜日、僕その当時働いてたのは夜のパレードの仕事だったんですよ。まぁまぁ夕方から出勤してくればいいんですけど、すっごい混んでるわけですよね。
パレード見る人もそれこそね3,4時間前からあのもう場所取りして確保して待ってるわけよ。ほんでだから僕らも早く出勤してその人達の相手をするっていうのが僕の仕事でいよいよパレードがスタートする直前だよね。
もう後ろ側までうわ~~って座ってて10分前だからいつものようにインフォメーションしようと。「みなさんこんばんは~!いよいよパレードは10分後にあちらからスタートです!」とかやろうかなと思ったんだけど、そん時ですよ。
もうね忘れもしないね向こう側の空を見上げたら、向こう側の空がねどんどんどんどん暗くなってくるんすよ。絶対雨降んなと思って、そしたら案の定雨降ってくるんだけどそれがバケツひっくり返したような雨で、夏だから夕立ですよね。みんな屋根があるとこに避難するじゃん。キャーって。
ところがねこれね一番前で待ってる人、3時間とか4時間待ってる人は動かないんすよ。動いたら自分の場所取られちゃうと思ってるから必死になって耐えるわけよね。雨が降ったらパレードは中止になると。あれね、電気で動いてるんで、そうすると今日は中止ですよって謝るのが僕らの仕事なので、3時間4時間前から待ってるからみんな肩がっくり落として、本当にやらないのってなるし、中には詰め寄ってくる人もいるよね。
僕はその人たちにすいませんすいませんって言って、一応謝るんだけど、悪いと思ってないね。セリフだよね。ほんで事務所戻ってその日の終礼ですよ。僕の先輩2人が「今日雨降ってパレード中止になったな。本当はな~やってあげたかったな~。」とかっていうのよ。何言ってんだこいつ。もう。早く帰らせてくれよボケ。とか思いながら後ろで聞いてて。
そしたら「俺なんでこんな話するかって言うとね、俺こないだ俺すごいの見たんだ。この間ね早番で朝の5時かな。車でディズニーランド前を通ったら、朝の5時なのにもう夏休みだから駐車場から車の列が出来てると。ちょっと気になったんだよね。どっから来たかなって。車を停めてナンバーを確認したんだ。これがまた凄いと。後ろから見てくんだけどほとんどがこれ県外ナンバー。
前に行けば行くほど出てくるのどんどん遠い所の県のナンバーが出てきて、で、その日一番前に停まってた車のナンバーを見てびっくりしちゃった。みんなどこだったと思う?」って言うんだよね。
「なんとその日一番前に停まってた車のナンバーあれな鹿児島ナンバーだったぞ!」とか言うんだよ。さすがには鹿児島が遠いのは分かるよ。もっとビックリするのはその鹿児島ナンバーの車の車種アルトだったぞっていうの。アルトって軽自動車なんだよね。
今からもう30年以上前だからめっちゃめちゃちっちゃいんだよ。近づいてったら家族四人しっかり乗ってるわけよ。本当に来たのかなと。運転席見て(あっ、絶対来たな)って確信したんだ。だって、運転席見たらよそれこそな、もうお父ちゃん死体のように(笑)お前、死んだように寝てるわけよ。
うわーー!って!!ほんで、助手席見たらお母さん起きてたから話しかけてみたの。「お客様、鹿児島ナンバーですよね。もしかしてあの車でですか?」って。「はい、来ました(必死な表情)」「えー!車でですか!!何でまた?」みたいな話になるじゃん。
そしたらそのお母さんが話してくれたのは、今横で寝てるこのお父ちゃんの仕事はお盆の時期にまとまった休みが取れるそんな仕事ではないと。でもたまたまよねで、お盆の直前になって会社であんたそんなに休みが欲しいんだったらいいよって私たち変わってあげようかって、休みをね変わってもらえたんだって。喜んで父ちゃん帰ってくるじゃん?
「父ちゃん休みとれたぞ!お前らどこ行きたい?」「ディズニーランドーー!」「よっしゃーお前ら父ちゃんに任せとけ!」
そこまで良かったんだけど、よくよく考えたらお盆の直前でしょ?飛行機は満席で取れない、電車も取れない。でも子ども達はもう行く気満々よね。近所にも言いふらしてるし。もうお父ちゃんとお母ちゃんで腹くくるしかないと。こうなったら仕方ないなと!家の車で行こうって。
大丈夫二人で運転してたらなんとかなるからって言ってそれでかわりばんこに運転しながら鹿児島から黄色のアルトで来たって。「どれぐらいかかったんですか?」「丸1日」って言ってたそうです。24時間ぶっ通しでかわりばんこに運転しながら鹿児島から来たって。
そんな人が今日もパレードを座って待ってたんじゃないかなって思ったら、みんなどう思う?って言われて…俺それ聞いてもうヤッべ~って思って。昨日遊びに来てるわけよね。先輩は話しながらもちらちらちらちら俺の方を見るわけよ。これ絶対俺に言ってると思って、やっべどうしよう。と思って。
したらもう一人の先輩が話だして…
「俺も同じことがあった。僕の場合はね遅番だった。遅番で昼の2時だったかなー。車でさあディズニーランドの前を通るじゃん。そしたら駐車場がいっぱいになってるんだ。」
裏側にあの従業員駐車場があるんですよ。そこに臨時でまわされるのね。一応だから分かってんの、お客様も。今入場制限してますと。だからチケットがない人は今は入れませんよっていうことは散々言われてるわけだから、みんな分かって停めてるんだけど、みんな入り口目指すんだよね。
みんな同じこと言ってる「せっかくここまで来たんだからとりあえず入り口までは行ってみよっか」って、ダメ元でみんな歩いてくるわけよね。暑い中。入口のところでチケット持ってない人っていうのは今みたいにあのスマホもないしさ、その場で何時になるかわかんないけど待ってもらうか、または予約券をそこで買ってもらって、違う日に出直してもらうか。それしか方法がないと。チケットない人達は元来た道を帰るわけよと。
この帰る時に、家族連れであればねお父ちゃんお母ちゃんは帰ることを子どもたちに伝えなきゃいけないんだよね。その伝え方なんだよね。
実は2種類あるって言われてて、1つはそのまま正直に言う。「ごめんね。でもディズニーランドね、見て?ほら、これ今日いっぱいなんだって。仕方ないねえ。だからもう帰ろう。」子ども達はそこでもう駄々をこねるわけよね。そうでしょ。だって目の前にしてきてんだから、嫌だ~ってなるじゃん!もうお父ちゃんお母ちゃんイライラ頂点だよね。もうそこ大爆発だよ。
中には「あんたたちそんなこと言ったってしょうがないでしょう!言うこと聞かないと置いてっちゃうわよ!!」「いやーーーーー」って余計泣き出して引きずられるようにして帰っていくと。
もう1つは、説明するのは一緒なんだけど嘘つくんだよ。だから、諭すらしいよね。さっきみたいに正直に言っちゃうと駄々こねるから。「ごめんね~~~~。ちょっとね間違えちゃったみたい。ミッキーさんねやっぱりこっちにいるんじゃないんだって。」「本当?」「本当だよ。ミッキーねあっちだった。ミッキーに会いに行こう。何しよっかな~ミッキーはねこっちだよー」とか言いながら元来た道をだましだまし帰るんだ。
考えてみてくれ。帰ったところで従業員駐車場でしょう。そんな嘘、バレるのはわかってんだよ。わかってる、そのバレる嘘をつきながらでも帰らなきゃいけないその父ちゃん母ちゃんのツラさよね、どれくらいツラいかね。そんな人たちが今日もね混んでる中で来てるかもしれない。実は昨日ねこの中に、そんな人たちがいる中で堂々と遊びに来た人がいます。みたいな(笑)
やっべー来た!!って。「香取たち4人立て!!」って言われてそこからボロかすよね。
まぁ、フォローしてくれて、「でも来てしまったことを今ここでね責めてもしょうがない。過去のことだから。次から気をつけなさい。ただ、確認したいことがある。お前昨日遊びに来た時にパレード見てたろ。」
これ完全にバレてんだよね。「はい、見てましたね」「どこで見てたの?」「一番前にこう座って見てました」「そうだなお前ら四人一番前にいたよな。知らねーと言わせねーぞ。後ろにちっちゃい子たくさんいたな。お前なんで譲ってやんねーんだよ。それにね現場にいる時はやれ親切なのサービスだのってやってるよな?それこそちっちゃい子とかがいて見えにくかったらちょっとちっちゃい子いるんで少し間あけてもらっていいですか?とか。何だったらじゃあちょっと小さい子だけあの前の方に出してもらっていいですかね?とかやるだろ?」
それが当時自分が考える親切・優しさ・サービスだと思ってたんだよね。
「いいか?お前らな、金もらってる時だけ親切ヅラしてやったところで、お前そんなもんお客様に伝わるのか」って。要は金もらってる時だけ、見返り求めてやってることね。「それは親切でも優しさでもサービスでもなんでもないぞと。こういうのよく覚えとけ、偽善って言うの。」って言われて・・・ガーンって感じでしょ?
「ちょっと考えてみろよ。普段からいつも通りの自分から誰かに優しくできたりねそんな風にできるそんな人間が現場でやってみ?それこそお客様は心の底から喜んでくれると思うよ。自分の仕事に魂入れてやるとかね、誇りを持って働くってのは俺はそういうことだと思うんだよなー」とかって言われて、そこまで言われてですよね、やっと目の前にいる人の気持ちを考えるようになるんですよ。
それまでは目の前にいる人は自分にとっては待ち時間でしかなかったから、でもその待ち時間を作ってるのは一人一人なわけでね。その人たちが一体どんな気持ちで今待ってるのかとか。もっと言ったらさっきのようにね、遠い遠いところから一生に一度来れるか来れないかっていう中で楽しみにして来てくれてるんだっていうのも、僕は毎日出勤してくるから分からなかったよね。
そこで初めて目の前にいる人の気持ちを本当の意味で考えさせられたんだよね。そこからだから夏休みの間朝イチ、早く出勤して車のナンバー調べに行きました。時間がある時にはあのインタビューしてみたんだよね。「あのなんでディズニーランドに来ようと思ったんですか?」とかって。
それぞれにそれぞれの思いがあってくるわけで、そこで初めて本気で目の前にいる人の気持ちを考えられるようになったきっかけだったかな。ぜひこれ見てくれてる人で、自分で選んだ自分の仕事なので、そんな風にお客様のことを本当に大切に思うように想像できるようなことをできると結構スイッチが入ってくんじゃないかなと思います。
ということでさようなら~!